義妹萌えとは何か 「義妹と畳は新しい方がいいよね」ライナーノート(1)

 例えば、少年マガジンで連載しているマンガ「ドメスティックな彼女」は義姉妹萌えモノではありません。もともと片思いのあこがれだった女性や、体の関係があった女性と、後に義姉妹となって同居し始めるからです。展開や人間関係を面白くするために義姉妹設定を使っているに過ぎません。

 

 義姉妹との恋愛を描いていても、義姉妹萌えとは限らないのです。

 

 じゃあ、どういうのが義妹萌えか。

思い出すのは、中学のとき、日本史の授業で習ったことです。

平安時代、異母兄妹の結婚はよくあることだったが、同母兄妹の結婚はない。異母兄妹は違う家で育つのできょうだいという意識がない。

教師は「現代でもあることだ。実の兄妹でも成長してから初めていっしょに住むようになったら、異性としか思えず、悩んだという知人の体験を聞いた」と言ってました。そんなことを中学生に教えるのもどうかしている気がしますが。

 つまり、実の兄妹でもいっしょに育たないと異性に見えてしまうのだから、ましてや、完全に血縁のない少女が突如、義妹になったら、そりゃあ意識するでしょう。

 思春期の男性にとって、実質あかの他人の同世代の少女と同じ家に住むことになり、名目上は妹と言われてもねえ。

 有性生殖する動物は、自分とは違う遺伝子を多く持った異性に惹かれるよう進化してますから、自分にはない美形遺伝子を持った少女だったりしたら、そりゃあもう。

妹萌えとは、本来、出会うことのない男女がいきなり同居することになり、互いに意識せざるを得ない状況が生じることです。義姉萌えも同じです。

 さらに、義娘と違って、義妹や義姉とは法律的に結婚できることを知らない人もいます。作中のキャラが「背徳のスパイス」と言ってますが、どこか後ろめたいからなおさらドキドキしてしまうのです。

  子供のころからという義妹ものもあります。その場合、進学や就職で実家を離れ、しばらくぶりに会ったら、前は子供にしか見えなかった義妹が大人になっていてビックリというシナリオです。ただ、これは幼なじみものと基本は同じで、義妹である必然性はあまりありません。

 

 義妹萌えの王道は親の再婚で義妹できるパターンです。嫁の妹、弟の嫁パターンはその手のジャンルによくあるようですが、社会的にも生物的にも結婚できる年齢に達し、経済的に自立した大人が不倫願望を満たす手頃な相手というのは、やはり、萌えとは違うものでしょう。

 

                             杉村風太